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歯の神経を残す【前編】

●歯の神経って?

こんにちは!歯科医師の松井です。

みなさんは、「歯の神経」と言われてピンときますか?

歯の構造はこのようになっています。

一番表面の白い部分が「エナメル質」

その内部の細かい線が描かれている部分が「象牙質」

そしてその更に内部、血管が描かれている朱色の部分が「歯髄」つまり「歯の神経」です

むし歯(細菌)が エナメル質→象牙質→歯髄 まで進行してしまうと、歯の神経を除去しなければならない事態になります。

●神経が無くなると何が悪いの?

歯の神経が無いということは、歯に対する刺激を感じなくなるということです。

具体的に言うと、再びむし歯になったときに痛みを感じないということです。

「むし歯で痛くないの?ラッキー!」と思う方もいるかもしれませんが、これは非常に危険です。

痛みというのは生体が備えている重要な感覚で、痛みのおかげで自分に対する侵襲を察知できます。

これがないということは、むし歯が知らず知らずのうちにどんどん進行してしまい、最悪の場合、気付いた時には歯を残せない(抜かなければいけない)ということになります。

もちろん、定期的にメンテナンスに来ている方はこんなことにはなりませんが・・・

 

そしてもうひとつ、こちらの方がより重要ですが、神経を除去した歯は「歯根破折」を非常に起こしやすくなります。

●歯根破折って?

歯根というのは、歯のなかで骨や歯肉に埋まっている部分のことを言います。

歯というのは毎日毎日ものすごい力がかかっている組織なので、その繰り返し・積み重ね等の要素で歯根が割れてしまうことを「歯根破折」と言います。

歯の神経を取った歯は、その際の処置で歯質が少なくなってしまい歯根破折を起こしやすくなってしまいます。つまり、歯の寿命が著しく短くなってしまいます。

そうなってしまった歯は、細菌感染が止められず基本的には抜歯となってしまいます。

むし歯でも歯周病でもないのに歯を抜かなければいけないのは我々も患者さんも非常に残念ですが、この「歯根破折」はむし歯・歯周病と合わせて抜歯理由のTOP3となっています。

歯というのは一生使っていくものなので、歯根破折を起こすリスクはなるべく少なくしていかなければなりません。

したがって、歯の神経を残すということは非常に大きな意義を持ちます。

まずはこのことを理解しましょう。


今回の前編では歯の神経(歯髄)を残すことの意義について説明させてもらいました。

普段の診療の中で、神経を除去することのマイナスの大きさを理解している患者さんは多くないように感じます。

一番大切なのは、むし歯がそこまで大きくなる前に歯医者にかかること、そして二度とそのようなむし歯を作らないよう、自分で口の中の環境を整えること(歯磨き然り、生活習慣然り)です。

次回の後編では、神経まで達する大きなむし歯でも何とか神経を取らずに残すことを試みる治療について説明します。

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