まず、歯周病とはどんな病気なのでしょうか?
歯周病もむし歯と同じように、お口の中にいる細菌が起こす、細菌感染症です。
この細菌によって歯肉は炎症を起こし、赤く腫れ、ブラッシング時に出血したりします。症状が進行していくと、歯を支えている骨まで溶かし、歯肉から膿がでたり、歯がグラグラと揺れてきたりします。
歯周病は「静かな殺し屋」ともいわれ、初めは自覚症状がなく進行することが多いため、気づいたときには抜歯しなければならないこともあります。
日本人では、20代でさえ約70%に何らかの歯周病の症状があると言われています。そして55歳以上では半数の人に重症化がみられます。だれでもかかる可能性が高い病気ですので、歯科医院でのチェックが大切になります。
それでは、歯周病はどのようにして起きるのでしょうか?
私たちのお口の中にはたくさんの細菌がバランスを保って棲んでいます。
これらの細菌は、歯の周りで口の中に残った食べかすなどをエサにして、白いネバネバしたプラーク(歯垢)を作り出します。毎回のブラッシングでプラークがきちんととれていれば問題はないのですが、磨き残しがあるとプラークはどんどん溜まって厚くなっていきます。そうすると空気がなくても生きていける菌が増え、空気が届きにくい歯と歯肉のすき間(歯肉溝)に入っていきます。そこは歯ブラシも届きにくいので、どんどん奥へと潜り込んで行き(歯周ポケット)、歯周病が進んで行くのです。
歯周病になったら、どのような症状が起きるのでしょうか?
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歯肉の色
健康な歯肉はごくうすいピンク色です。歯周病になるとピンク色が濃くなって、炎症がすすむにつれ赤くなっていきます。
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歯肉の腫れ
健康な歯肉は引き締まって、ピーンと張ったような状態で歯と歯の間にシャープに入っていきます。
歯周病になると歯と歯の間の歯肉は丸みを帯び、炎症がすすむと厚ぼったくなったり、ぶよぶよたるんで腫れてきます。 -
出血
ブラッシング時に出血したり、硬いものを食べると出血したりします。
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膿と口臭
歯周病が進行すると、歯肉が腫れて膿をもちます。その膿や深い歯周ポケットの中の細菌は歯周病特有のイヤなニオイを発生し、口臭がしてきます。
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歯の動揺と歯並びの変化
歯周病が進んで、歯を支えている骨(歯槽骨)を壊していくと、歯がグラグラと動くようになり、すき間があいたり、逆に歯が重なったりするなど、歯並びが変わってくることもあります。
歯周病を悪化させるのは何でしょう?
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お口の中の環境
不適合な被せものなどがあると細菌が隠れやすく、さらに歯ブラシが届きにくくなります。
歯並びが悪いと、歯磨きがしづらくなりプラークがたまりやすくなります。
歯ぎしりや噛み締めによって、歯や歯周組織に負担がかかると歯周病が悪化しやすくなります。
口呼吸があると、唾液が乾きやすくなり、お口の中の自浄作用が低下して菌の活動が活発になります。また口呼吸は、アレルギーになりやすく、免疫力も低下するため症状が進行します。 -
全身の抵抗力、免疫力
糖尿病などの全身疾患や妊娠中、更年期などホルモンの変動なども悪化の原因となることがあります。
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生活習慣
歯磨き習慣、喫煙、ストレス、栄養不足、過剰な糖質など。特にタバコに含まれる有害物質は免疫機能や細胞の働きを阻害したり、血行を悪くしたりと歯周病の進行を早めます。
歯を支える歯肉、歯根膜、歯槽骨はタンパク質、ミネラル、ビタミンでできており、十分な栄養が摂れていないと歯周病は悪化していきます。
②の全身の問題は、③の生活習慣を改善することでそのリスクをかなり減らすことができます。
歯周病は全身疾患と大きな関わりがある!!

近年、予防歯科に対する意識が高い患者さんが増えてきています。なぜ、予防が大切なのでしょうか?
もちろん、むし歯や歯周病などお口の中の健康を守るために予防は不可欠です。歯が健康で奥歯でしっかり噛め、美味しく食事ができて、十分な栄養がとれることは健康で寿命を全うするためにとても重要です。しかし、それだけではないのです。歯周病は全身の健康維持にも大きく関わっているのです。
なぜ、全身疾患へ影響するのか?
お口の中は細菌が身体の中へ一番入りやすい環境です。
もし、ブラッシングで歯肉から出血したとすると、その炎症物質が歯肉の血管から血液に入って、血流にのり全身へ運ばれていってしまうのです。そして、様々な臓器や血管壁にたどり着き、毒性を発揮して、全身疾患を悪化させるなどの悪影響を及ぼすのです。
歯周病が関連する様々な病気があります
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糖尿病
高血糖によって炎症が強まるため、歯周病は悪化しやすくなります。また、歯周病によって作られる物質がインスリンの働きを阻むため糖尿病を悪化させやすくなるという双方に悪影響を及ぼします。
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循環器疾患
歯周病が重症化した人は、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、感染性心内膜炎などが1.5 〜2.8倍発生しやすいといわれています。
心臓の手術後や、弁膜症のある人は特に注意が必要です。 -
骨粗鬆症
閉経後の女性は女性ホルモンの減少し、骨量も少なくなります。歯槽骨も弱くなり、歯周病が悪化しやすくなります。
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リウマチ
歯周病と関節リウマチは同じ炎症性物質が関連しているので、お互いに病状に影響します。
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誤嚥性肺炎
むせて唾液に混ざって歯周病菌が肺へ入ると肺炎(誤嚥性肺炎)を起こしたりします。免疫力の低い病気の方や高齢者ではそれで命を落とすことも珍しくありません。
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早産
歯周病菌の炎症性物質が子宮を収縮させるため、早産、低体重児の出産の可能性が約3.5倍になります。